保全計画の立て方|周期の決め方と、形骸化させない運用のコツ

保全計画とは、定期的に行う保全作業について「どの設備に・何を・どの周期で行うか」をあらかじめ決め、予定として管理する仕組みです。

立て方の要点は3つ。計画に載せる作業を「履歴・メーカー推奨・法令」の3つの源から拾うこと、周期をまず時間基準で固定すること、そして予定と実績を突き合わせて未対応を残さないことです。本記事ではこの手順を順に解説します。

「壊れてから直す」対応に追われる状態から抜け出すには、定期的にやるべき作業を予定に変える──つまり保全計画が必要です。しかし、意気込んで年間計画表を作ったものの、数ヶ月後には誰も見ていない、という現場は少なくありません。問題は多くの場合、計画の立て方ではなく、立てた後の回し方にあります。ここでは、計画に載せる作業の決め方から、周期の決め方、形骸化させないための運用までを3つの手順で整理します。設備管理の仕組み全体の中での保全計画の位置づけは、設備管理の始め方|ゼロから仕組みをつくる5つのステップ(ステップ3・4)を参照してください。

保全計画がうまくいかない典型パターン

先に、失敗の形を知っておきます。保全計画が機能しなくなる経路は、おおむね次の3つに集約されます。

  • 立てて終わりになる。計画表を作った時点で仕事が完了した気になり、実施したかどうかを誰も突き合わせない。予定日を過ぎた作業が音もなく流れていき、半年後には計画表と実態が別物になっています。
  • 最初から全設備を網羅しようとする。すべての設備に同じ密度の計画を組むと、作業量が現場の上限を超えます。守れない計画は、守られない実績を積み重ねて、計画そのものへの信頼を失わせます。
  • 周期に根拠がなく、見直されもしない。「なんとなく年1回」で決めた周期が、故障の実態と合っているかを検証する機会がないまま固定される。過剰な整備にも、手遅れの故障にも、どちらにも転びます。

裏を返せば、対策は「対象を絞る」「周期に初期値の根拠を持ち、実績で直す」「予定と実績を突き合わせ続ける」の3つです。以降の手順は、この3つを実現する組み立てになっています。

保全計画と点検はどう違うか

手順に入る前に、混同されやすい2つの言葉を整理しておきます。保全計画と点検は、どちらも「定期的に設備を見る」活動ですが、性格の異なる別の仕組みです。

保全計画 点検
目的 劣化を進ませないために、手を打つ作業を予定どおり実施する 設備の状態を確認・測定し、異常や劣化の兆候を見つける
中身 部品交換、給油、清掃、オーバーホールなどの作業 目視確認、測定値の記録、良否の判定
結果として残るもの 実施した作業の記録(予定に対する実績) 状態の記録(測定値・判定の推移)
両者の関係 点検で見つかった劣化の兆候が、保全計画の作業(交換・整備)や周期見直しの材料になる。補完関係にあり、どちらかがどちらかを兼ねるものではない

この区別がついていないと、「点検はしているのに故障が減らない」という状態に陥りがちです。点検は見つける活動であり、手を打つ活動は保全計画の側にあります。点検で気づき、計画で手を打つ──この分担で考えてください。点検の仕組みづくりは設備点検表の作り方|点検項目の決め方と、記録が続く運用のコツで解説しています。

手順1. 計画に載せる作業を決める ── 3つの源から拾う

計画に載せる作業は、頭の中から捻り出すものではなく、次の3つの源から拾い出すものです。

拾い方
1. 修理・整備の履歴 履歴の中で繰り返し発生している作業(オイル交換、フィルター清掃、ベルト交換など)を拾う。発生間隔がそのまま周期の初期値になる。最も実態に合った源
2. メーカー推奨の定期整備 取扱説明書・整備要領書に記載された定期交換部品と推奨周期。履歴がまだ貯まっていない設備では、これが周期の初期値になる
3. 法令にもとづく点検・整備 消防設備、圧力容器、フロン類を使う機器など、法令で実施が求められるもの。周期を自社の都合で決められない点が他の2つと異なる。台帳の関連法規の項目で対象設備を識別しておくと漏れなく拾える

対象の絞り方は、すべての設備に同じ厚さの計画を組まないことに尽きます。修理が繰り返されている設備、止まったときの影響が大きかった設備から厚くする。この濃淡の判断材料は履歴が与えてくれます。履歴がまだない場合は、「止まると業務が止まる」設備を10台から20台ほど選び、その分の計画から始めてください。法令にもとづくものだけは、影響の大小にかかわらず最初から漏れなく載せます。

ここで材料になる修理・整備の履歴を、あとから使える形で残す方法は次の記事で解説しています。

手順2. 周期を決める ── 初期値はメーカー推奨、調整は実績で

周期は「日・週・月・年のどれを単位に、いくつごとか」という形で決めます(例: 3ヶ月ごと、1年ごと)。最初に悩むのは「その数字に根拠がない」ことですが、初期値に完璧な根拠は要りません。決め方の原則は次のとおりです。

  • 初期値はメーカー推奨か、履歴の発生間隔に合わせる。どちらもなければ、同種の設備の周期にそろえます。まず数字を置くことが先で、正しさは運用の中で検証します。
  • 迷ったら短め(安全側)から始める。周期を延ばす判断は「その周期で異常がなかった」という実績を根拠にできますが、縮める判断のきっかけは多くの場合、故障そのものです。実績を貯めてから延ばす方向が、リスクの少ない調整です。
  • 年1回、実績と突き合わせて見直す。周期内に同じ箇所の故障が起きていれば短くする。長期間、異常も交換品の劣化もなければ延ばすことを検討する。周期は決めるものではなく、育てるものです。

なお、日数や稼働時間で周期を固定するやり方(時間基準)のほかに、測定値の推移から手を打つ時期を判断するやり方(状態基準)もあります。中小規模の現場では、まず時間基準で固定し、点検の記録が貯まった設備から状態基準の判断を取り入れる順序が現実的です。2つの保全方式の正確な定義は、官公庁の一次資料にあたって解説している中立メディア「設備メンテナンスNews」を参照してください。

手順3. 予定に変えて、実行を管理する

作業と周期が決まったら、それを日付の入った予定に展開します。「3ヶ月ごと」という決めごとのままでは実行を管理できません。「4月10日、7月10日、10月10日……」という予定の列になってはじめて、実施済みと未対応を区別できます。

そして、保全計画の成否を分けるのはここからです。実施したら、いつ・誰が・何をしたかの実績を記録し、必ず元の予定に紐づけます。予定と実績が紐づいていれば、「予定日を過ぎたのに実施されていない作業」──つまり未対応が、探さなくても見える状態になります。未対応が埋もれずに見えることが、形骸化を防ぐ仕組みのすべてと言ってよいほど重要です。

Excelで運用するなら、年間計画表の予定セルの横に実施日の記入欄を設け、月に一度「実施日が空欄のまま予定日を過ぎた行」を洗い出します。手作業にはなりますが、この突き合わせを月次で続けられるなら、Excelでも保全計画は機能します。逆に、この突き合わせが続かなくなってきたら、道具を変える時期です。

システムでの保全計画管理(設備管理の匠WEB版の場合)

設備管理システムを使うと、手順3の「予定への展開」と「予定と実績の突き合わせ」が自動化されます。当社の「設備管理の匠WEB版」を例にすると、流れは次のようになります。

  • 保全計画台帳に、作業と周期を登録する。件名(例: 1号コンプレッサー オイル交換)、対象の設備、保全種類、サイクルの開始日と、周期を「サイクル×単位(日・週・月・年)」の形で登録します(例: 3ヶ月ごと)。担当するメンテ業者や金額の見込みも持たせられます。
  • 予定が自動で生成される。登録した周期にもとづいて、個々の日付の予定(保全計画データ)が自動的に作られます。年間計画表を手で書き写す作業はありません。予定は保全計画カレンダーの画面でカレンダー形式でも確認できます。
  • 実施したら、予定に対して実績を入力する。記録を新しく起こすのではなく、未実施の予定に実績を入力します。入力の入口は1つではなく、メンテナンス台帳の一覧からでも、保全計画データの一覧からでも、保全計画カレンダーの予定からでも構いません。日々メンテナンス台帳を見ている担当者は、その画面のまま実績を入力できます。どこから入力しても、実績はメンテナンス台帳の記録として残り、元の予定と紐づきます。「どの保全計画の実績か」を選び直す作業は発生しないため、紐づけ忘れで予定と実績がずれることがありません。
  • 未対応は探さなくても見える。実績を対応済みにすると、その予定の状態(未対応・対応中・対応済み)もシステム側で自動的に更新されます。ログイン直後のダッシュボードには保全計画の未完了が常時表示されるため、月1回の振り返りでは、この未対応一覧を見て「やるか、やめるか、周期を変えるか」を決めるだけになります。予定日や未対応をメールで通知する機能もあります(メール送信機能は有料プランでの提供です)。

保全計画台帳は、フリープランでも100台帳まで、期間無制限・無料で利用できます。重要設備に絞って始める規模であれば、この枠内で十分に運用を試せます。無料でどこまでできるかの全体像は、次の記事で解説しています。

保全計画を形骸化させない3つの運用ルール
  • 月に1回、未対応を見る場を持つ。未対応の予定を放置しないこと以上に効く施策はありません。実施できなかった予定は、流すのではなく「延期する・やめる・周期を変える」のいずれかを決めて計画に反映します。
  • 実績は必ず予定に紐づける。実施の記録が予定とつながっていない計画表は、実施率を確かめようがなく、必ず実態から離れていきます。
  • 周期は年に1回見直す。故障の実績と突き合わせて、短くする設備・延ばす設備を判断します。見直しの日付をあらかじめ決めておくと、先送りされません。

よくある質問

Q. 何件くらいの計画から始めればよいですか?

A. 件数の正解はありませんが、「止まると困る」設備10台から20台について、繰り返し発生している作業とメーカー推奨の定期整備を載せると、多くの現場で数十件の規模になります。これに法令にもとづく点検・整備を加えたものが最初の計画です。大切なのは、その件数を現場が守りきれるかです。初回から実施率が5割を切るような計画は多すぎます。件数を絞って実施率を保ち、回ることを確かめてから広げてください。

Q. 周期の根拠になるデータがありません。それでも決めてよいですか?

A. 決めてください。履歴がない段階では、メーカー推奨の周期を初期値にするのが最も合理的です。それもなければ、同種設備にそろえるか、短め(安全側)に置きます。重要なのは初期値の精度ではなく、実施と記録を続けて、実績で周期を修正していく仕組みのほうです。1年も回せば、周期を延ばせる作業と縮めるべき作業が記録から見えてきます。

Q. 年間保全計画表はExcelで作るべきですか、システムを使うべきですか?

A. どちらでも保全計画は回せます。分かれ目は表の作成ではなく、予定と実績の突き合わせを続けられるかにあります。Excelでは予定の展開・実施日の転記・未対応の洗い出しがすべて手作業になるため、設備の台数と計画の件数が増えるほど突き合わせが追いつかなくなります。システムでは予定の生成と未対応の表示が自動化されるため、月次の振り返りが「一覧を見て判断する」作業だけになります。計画の件数が増えて突き合わせが負担になってきたときが、切り替えの目安です。

設備保全の用語や保全方式の正確な定義は、当社が運営に関わる中立メディア「設備メンテナンスNews」の用語集で、官公庁の一次資料にもとづき解説しています。あわせてご覧ください。

本記事は保全計画の立て方と運用の一般的な考え方を解説したものです。法令にもとづく点検・整備の要件(対象・頻度・記録)は、設備の種類・規模・地域によって異なる場合があります。実際の運用にあたっては、該当する法令および所管官庁の資料をご確認ください。

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