故障記録・修理報告書の書き方|記入例で分かる、あとで使える記録の残し方

故障記録・修理報告書とは、設備に起きた1件の故障について「何が起きたか(現象)・なぜ起きたか(原因)・何をしたか(処置)・次にどうするか(再発防止)」を残す記録です。書き方の要点は、この4つを別々の欄に分けて書くことです。

あわせて、5W1Hをそろえる、確認した事実と推定を分ける、停止時間と交換部品を数値と型番で残す。この3点を守ると、半年後に別の担当者が読んでも状況を再現できる記録になります。本記事では、悪い例と良い例を並べた記入例と、エクセルや紙に写して使える記入項目の一覧を掲載します。

故障対応のあとに書く報告書が、「モーター故障。修理して復旧」の1行で終わっていないでしょうか。書いた本人には十分でも、次に同じ設備が止まったとき、この1行からは何も引き出せません。故障記録や修理報告書は、上司に提出するための書類である前に、次に同じことが起きたときの自分と後任者への引き継ぎです。ここでは、故障1件の記録を「あとで使える形」で書くための具体的な書き方を、記入例を使って解説します。なお、記録を書く場所を1か所に決める、月に1回見返すといった、記録を仕組みとして回す方法はメンテナンス記録・故障履歴の書き方|設備の修理記録を組織の資産に変えるで扱っています。本記事はその手前の、1枚の報告書の書き方に絞ります。

用語としての故障記録の定義は、用語集のページにまとめています。

故障記録・修理報告書に書く4つのこと

様式の名前は、故障記録、修理報告書、メンテナンス報告書、保全記録など現場によってさまざまですが、故障1件について残すべき中身は共通しています。次の4つです。

区分 答える問い 書く内容
現象 何が起きたか 見た・聞いた・測ったままの事実。止まった、異音がした、表示が出た、熱かった、など。原因の見立ては書かない
原因 なぜ起きたか 分解や測定で確認できたことと、そこから考えた推定。分からなければ「不明」と書く
処置 何をしたか 応急処置と、復旧のために行った修理。交換した部品、復旧後に確認したこと
再発防止 次にどうするか 同じ故障を防ぐために決めたこと。誰が・いつまでに・何をするか。残っている課題

報告書が役に立たなくなる一番の原因は、この4つが1つの文章に溶けてしまうことです。「ベアリングが古くなって焼き付いたので交換した」という1文には、現象も原因も処置も入っているように見えます。しかし、何を見てそう判断したのか、焼き付きは確認したのか推測なのか、交換したのはどの部品かが、どれも読み取れません。欄を分けること自体が、書き手に「それは見たことか、考えたことか」を確かめさせる仕掛けになります。

あとで使える報告書にする5つの書き方

1. 現象は「見たまま」を書く

現象の欄に「モーター故障」と書くのは、すでに原因の見立てを書いてしまっています。現象として書くのは、その見立てに至る前に観察したことです。次の3点を意識すると、書く内容が決まります。

  • どう気づいたか。運転中に止まった、起動しなかった、警報や表示が出た、作業者が異音に気づいた、など
  • そのとき設備はどういう状態だったか。運転中か起動時か、負荷はいつもどおりか、直前に段取り替えや清掃をしていないか
  • 五感と計器で分かったこと。音、におい、熱、振動、漏れ、表示されたエラー番号、計器の値

2. 5W1Hを欄に割り当てる

5W1Hは文章の心得として語られがちですが、報告書では記入欄として最初から用意しておくほうが確実です。欄があれば、書き忘れは空欄として目に見えます。

「いつ」は発生した日時と復旧した日時(時刻まで書けば停止時間を計算できます)、「どこで」は設備の管理番号と名称に加えて故障した部位、「誰が」は発見した人と対応した人、「何が」は現象、「なぜ」は原因、「どのように」は処置と復旧を確認した方法です。同型機が複数ある現場では、名称だけでは設備を特定できないため、管理番号を必ず書きます。

3. 事実と推定を分けて書く

原因の欄は、報告書の中で最も「言い切り」が起きやすい場所です。「原因: 老朽化」「原因: グリース切れ」と書かれていても、それが分解して確認した結果なのか、状況からの推測なのかは、書いた本人にしか分かりません。そして推測は、記録に残った時点で、読む人にとっては事実として扱われます。

原因は、次の2段に分けて書きます。

  • 確認した事実: 分解して見たもの、測定した値、交換して直ったという結果
  • 推定: 事実から考えた原因。文末を「と推定」「の可能性がある」とし、確かめていないことは「未確認」と書く

原因が分からなかった場合は、空欄にせず「不明」と書き、何を確認して何を確認していないかを残します。「不明。ただし電源電圧と配線の緩みは確認し、異常なし」という記録は、次に対応する人が同じ確認を繰り返さずに済むという点で、立派に役に立つ記録です。

4. 停止時間と交換部品は、数値と型番で残す

「半日ほど止まった」「ベアリングを交換した」という書き方は、読めば意味は通じますが、あとで集計も発注もできません。次のように書き分けます。

  • 停止時間: 止まった時刻と再開した時刻を書き、あわせて時間数を数値で書く(例: 4.5時間)。単位は欄の見出しで「時間」か「分」に統一しておく
  • 交換部品: 部品名だけでなく、型番と数量、取り付けた位置まで書く(例: 軸受 6206ZZ 1個、負荷側)。次回は現物を外す前に手配できる
  • 作業時間: 人数と時間。外注した場合は業者名もあわせて残す
  • 費用: 部品代と外注費。正確な金額が後日になる場合は、概算を入れておき、確定したら直す

数値で残した記録が貯まると、故障と故障のあいだの間隔や、復旧までにかかった時間を指標として見られるようになります。指標の意味と、貯まった記録の見方は次のページを参照してください。

5. 再発防止は「誰が・いつまでに・何を」で書く

再発防止の欄に並びがちなのが、「今後注意する」「点検を強化する」「周知徹底する」といった言葉です。これらは誰の予定にも入らないため、実行されたかどうかを後から確かめられません。再発防止は、実施したかどうかを確認できる形で書きます。

  • 作業として書く。「給脂を3ヶ月ごとに行う」「同型機2台の軸受の音と温度を確認する」のように、やることを具体的に
  • 担当と期限をつける。誰が、いつまでに行うか
  • 応急処置で止めた場合は、そう書く。「仮復旧。恒久対策は部品入荷後に実施」と書いてあれば、対応が終わっていないことが記録から分かる
  • 何もしないと決めた場合も、理由を書く。「発生は初回で設備への影響も小さいため、今回は対策なし。再発したら見直す」も判断の記録として意味がある

再発防止として決めた作業のうち、給脂や部品の定期交換のように繰り返し行うものは、報告書に書いて終わりにせず、保全計画に載せて予定として管理します。計画への載せ方と周期の決め方は保全計画の立て方|周期の決め方と、形骸化させない運用のコツで解説しています。

記入例 ── 同じ故障を「悪い例」と「良い例」で比べる

ここまでの書き方を、記入例で確認します。題材は、搬送コンベヤの駆動モーターが運転中に止まったという故障です。なお、これは書き方を説明するために用意した架空の事例で、設備名・型番・数値・金額はすべて例示です。

記入項目 悪い例 良い例
設備・部位 コンベヤ 管理番号 CV-02 第2ライン搬送コンベヤ/駆動モーター
発生日時 10月1日 10月1日 10時20分ごろ(運転中)。第2ラインのオペレーターが停止に気づき、保全担当へ連絡
現象 モーター故障 運転中にコンベヤが停止。制御盤でサーマルリレーが作動していた。モーターの外装は手を当てていられないほど熱い。オペレーターによると、停止の少し前からモーター付近で「ゴロゴロ」という音がしていた。搬送量は通常どおり
応急処置 (記入なし) 30分冷ましてからリセットし再起動。約15分後に再び停止したため運転を中止し、台車での手運びに切り替えた。再起動時の電流は8.4A(定格6.8A)
原因(確認した事実) 老朽化 ベルトを外してモーター単体で軸を手で回すと重く、引っかかりがある。分解すると、負荷側の軸受のグリースが黒く固まり、転動面に傷があった。絶縁抵抗は測定して異常なし。巻線に焼けた跡はない
原因(推定) 軸受の潤滑不良で回転が重くなり、過負荷になったと推定。潤滑不良に至った経緯は未確認(このモーターの給脂の記録が残っていない)
処置 修理して復旧 軸受を負荷側・反負荷側とも交換。組み付け後に20分の試運転を行い、電流5.9A、異音と異常な発熱がないことを確認して運転を再開
交換部品 ベアリング 軸受 6206ZZ 1個(負荷側)、6205ZZ 1個(反負荷側)。在庫がなく、取引先の商社から取り寄せた(到着13時10分)
停止時間 半日くらい 4.5時間(10時20分から14時50分)。うち部品の到着待ちが約1時間
作業者・作業時間・費用 保全 保全担当2名(社内対応)、延べ5時間。部品代 4,800円、外注費なし
再発防止 今後注意する (1) CV-02 駆動モーターの給脂を3ヶ月ごとの作業として保全計画に登録する(保全担当、10月10日まで)。(2) 同型のモーターを使う CV-01 と CV-03 の軸受の音と温度を確認する(保全担当、今週中)。(3) 軸受 6206ZZ と 6205ZZ を各1個、予備として在庫する(購買へ依頼済み)
判断の理由・残った課題 (記入なし) 絶縁抵抗に異常がなく巻線も焼けていなかったため、モーター本体の交換ではなく軸受の交換とした。次に同じ停止が起きた場合は、モーター本体の更新を検討する

悪い例は、どの欄も嘘は書いていません。それでも、この記録からは「次に何をすればよいか」が何ひとつ引き出せません。良い例との違いは、文章のうまさではなく、次の4点です。

  • 現象が見たままで書かれている。「モーター故障」ではなく、サーマルリレーの作動、発熱、異音という観察が残っています。次に同じ音がした時点で、止まる前に手を打てます。
  • 原因が事実と推定に分かれている。「老朽化」は、何も確かめていなくても書ける言葉です。良い例では、軸受の状態は確認済み、潤滑不良に至った経緯は未確認、と線が引かれています。
  • 数値と型番がある。停止時間は4.5時間、部品は型番と数量まで。次回は軸受を外す前に手配でき、設備ごとの停止時間の集計にもそのまま使えます。
  • 再発防止に担当と期限がある。「今後注意する」は確認のしようがありませんが、「10月10日までに保全計画に登録」は、されたかどうかを確かめられます。

良い例は長く見えますが、新しく調べて書いたことはありません。どれも対応中に見て、測って、判断したことです。書く量が増えたのではなく、対応した人の頭の中にしかなかった情報を、欄に沿って出しただけです。

写して使える記入項目一覧(エクセル・紙の様式用)

自社の故障記録・修理報告書の様式をこれから作る、あるいは見直す場合は、次の一覧をそのまま写して使ってください。紙なら上から順に欄を並べ、エクセルなら項目を列見出しにします。

記入項目 入力の形 書くこと
報告書番号・記入者・記入日 連番・文字・日付 1件に1つの番号と、誰がいつ書いたか
設備の管理番号・名称・部位 文字 設備台帳と同じ管理番号と名称。あわせて故障した部位(駆動モーター、制御盤など)
発生日時・発見者 日付と時刻・文字 故障が起きた、または気づいた日時と、最初に気づいた人
現象 文章 見た・聞いた・測ったままの事実。表示されたエラー番号や計器の値も
故障の分類 選択 機械的・電気的など、あらかじめ決めた選択肢から選ぶ
応急処置 文章 その場で行ったことと、その結果
原因(確認した事実) 文章 分解・測定で確認できたこと。確認して異常がなかったことも書く
原因(推定) 文章 事実から考えた原因。未確認のことは「未確認」、分からなければ「不明」
原因の分類 選択 摩耗、劣化、潤滑不良、操作ミス、不明など、決めた選択肢から選ぶ
処置 文章 復旧のために行った修理と、復旧を確認した方法。仮復旧の場合はそう明記する
交換部品 文字 部品名・型番・数量・取り付け位置
作業の開始日時・終了日時 日付と時刻 修理に着手した日時と、運転を再開した日時
停止時間(時間) 数値 設備が止まっていた時間。数値だけを入れる
作業者・依頼先/作業時間(時間) 文字・数値 社内の担当者名、外注した場合は業者名。作業時間は人数分を合計した延べ時間
費用(円) 数値 部品代と外注費の合計。概算でも入れておく
再発防止(内容・担当・期限) 文章 誰が・いつまでに・何をするか。対策なしと決めた場合はその理由
判断の理由・残った課題 文章 その処置を選んだ理由。次に起きたら何を疑い、何を検討するか
対応状況 選択 対応中・仮復旧・対応済みなど。終わっていない件を拾い出せるようにする

エクセルで使う場合は、次の3点を守ると、書いた記録をそのまま並べ替えや集計に使えます。

  • 1件を1行にする。報告書1枚を1シートにすると、件数が増えたときに設備ごとの並べ替えも集計もできません。上の項目を列見出しにした一覧表に、故障1件を1行で書き足していきます。
  • 数値の列には数値だけを入れる。停止時間・作業時間・費用のセルに「4.5時間」「約5千円」と文字を混ぜると合計を計算できません。単位は列見出しに書きます。
  • 分類の列は選択肢から選ぶ。故障の分類・原因の分類・対応状況は、入力規則のリストで選択式にすると、書く人による表記のばらつきを防げます。

最初からすべての項目を埋める必要はありません。項目が多すぎて書かれなくなるくらいなら、設備・発生日時・現象・原因・処置・停止時間の6つから始めてください。この様式で貯めた記録を、設備ごとの履歴としてどう管理し、どう続けるかは次の記事で解説しています。

書き終えたら確認する5つのこと
  • 設備を特定できるか。管理番号が入っているか。「コンベヤ」「2階のポンプ」で終わっていないか。
  • 現象の欄に、原因の見立てを書いていないか。「故障」「不良」という言葉が出てきたら、その手前で見たことに書き直します。
  • 原因は、確認したことと推定が区別できるか。確かめていないことを言い切っていないか。
  • 停止時間と交換部品が、数値と型番で入っているか。「半日」「ベアリング」のままになっていないか。
  • 再発防止に、担当と期限があるか。「注意する」「徹底する」で終わっていないか。

システムで記録する場合(設備管理の匠WEB版の場合)

設備管理システムを使うと、この記事の記入項目は最初から入力欄として用意されています。当社の「設備管理の匠WEB版」では、故障の事実を故障台帳に、行った修理をメンテナンス台帳に記録します。故障台帳の登録画面では、故障の内容とあわせて、その故障に対して行った修理の内容も同じ画面で入力でき、2つの記録は紐づいて保存されます。「現象と原因」と「処置」を分けて書くという本記事の考え方が、そのまま画面の構成になっています。

本記事の記入項目と、画面の項目の対応は次のとおりです。

本記事の記入項目 記録する台帳と、画面の項目名
設備 機器台帳に登録した設備を選んで記録する(記録は設備に紐づく)
発生日時 故障台帳: 発生年月日
現象 故障台帳: 故障内容
故障の分類・原因の分類 故障台帳: 故障分類、故障原因(どちらも登録した選択肢から選ぶ)
応急処置・処置 メンテナンス台帳: メンテナンス内容
交換部品 メンテナンス台帳: 交換部品その他
作業の開始・終了、対応状況 メンテナンス台帳: 開始年月日、終了年月日、対応済フラグ
停止時間・費用 メンテナンス台帳: 停止時間、メンテ金額
作業者・依頼先、作業時間 メンテナンス台帳: 作業従事者、メンテ業者、作業時間
原因の詳細(事実と推定)、再発防止、判断の理由 メンテナンス台帳: 結果・考察(書ききれない補足は備考へ)

原因については、集計に使う分類を「故障原因」の選択肢で選び、確認した事実と推定の書き分けは「結果・考察」に文章で残す、という使い分けになります。「結果・考察」の欄の中で「事実:」「推定:」「再発防止:」と見出しを立てて書くと、本記事の書き方をそのまま保てます。再発防止として決めた作業のうち、給脂や定期交換のように繰り返すものは、保全計画台帳に登録して予定として管理します。

メンテナンス台帳と故障台帳は、フリープランでも期間無制限・無料で利用できます(保全計画台帳はフリープランで100台帳まで)。故障箇所の写真や業者の報告書などを記録に添付する関連ファイル登録は有料プランの機能で、フリープランではサンプルとして5ファイルまで登録できます。無料でどこまでできるかの全体像は、次の記事で解説しています。

よくある質問

Q. 故障記録と修理報告書は、別々の書類にすべきですか?

A. 紙やエクセルで運用するなら、故障1件につき1枚(1行)にまとめて構いません。大切なのは書類を分けることではなく、「起きたこと(現象・原因)」と「やったこと(処置)」の欄が分かれていることです。欄さえ分かれていれば、あとから故障の件数を数えることも、修理にかかった時間や費用を合計することもできます。提出用の修理報告書が別に必要な場合も、同じ項目から書き写せば二度手間になりません。

Q. 原因が分からないまま復旧した場合は、どう書けばよいですか?

A. 「不明」と書いてください。空欄や、もっともらしい推測の言い切りよりも、「不明」のほうが正確な記録です。そのうえで、確認したことと、確認していないことを残します。たとえば「リセットで復旧。原因不明。電源電圧と端子の緩みは確認して異常なし。モーター内部は未確認」と書いてあれば、再発したときに次の担当者はモーター内部から調べ始められます。原因不明のまま同じ現象が繰り返されていること自体も、記録が並んではじめて見えてくる重要な情報です。

Q. 修理報告書はエクセルで管理しても問題ありませんか?

A. 問題ありません。本記事の記入項目を列見出しにして、1件1行の一覧表にすれば、設備別の並べ替えや停止時間の合計は十分に行えます。行き詰まりやすいのは、報告書を1件ごとに別のファイルやシートで保存している場合と、複数の人が同じファイルを同時に更新する場合です。設備ごとに過去の記録を探すのに時間がかかるようになってきたら、設備に記録が紐づくシステムへの切り替えを検討する時期です。

設備保全の用語や保全方式の正確な定義は、当社が運営に関わる中立メディア「設備メンテナンスNews」の用語集で、官公庁の一次資料にもとづき解説しています。あわせてご覧ください。

本記事は故障記録・修理報告書の書き方について、一般的な考え方を解説したものです。記入例は説明のために用意した架空の事例であり、実在の設備や事故を示すものではありません。法令にもとづく点検・整備の記録要件(記載事項・保存年限など)は制度ごとに異なる場合があります。該当する法令および所管官庁の資料をご確認ください。

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