設備保全管理システム(CMMS)の選び方|比較の前に決める基準と機能チェックリスト

設備保全管理システム(CMMS)を選ぶときは、製品を比べる前に「何を管理したいか」「誰が入力するか」「何台から始めるか」を決め、その要件に沿った同じチェックリストで候補を採点するのが確実な進め方です。

本記事では、比較の前に決める3つのこと、候補を同じ基準で採点できる機能チェックリスト、費用の内訳、クラウド・オンプレミス・Excelの違い、無料トライアルの進め方を順に解説します。製品のランキングは載せていません。

設備保全管理システムを探しはじめると、「比較」「おすすめ」「10選」といった記事がいくつも見つかります。ところが読み終えても、自社に合うのがどれなのかは決まらない、という経験をした方は多いはずです。理由は単純で、一覧表は製品の側から書かれており、選ぶ側の基準が入っていないからです。ここでは、中小規模の工場やビルの設備担当者が、自分の現場の基準で候補を比べられるように、判断の道具をそろえます。CMMSそのものの機能と役割はCMMS(設備保全管理システム)とは?機能・選び方と無料で始める設備管理で解説しているので、本記事は「どう選ぶか」に絞ります。

この記事が製品ランキングを載せない理由

本記事は他社の製品名を挙げた比較や順位づけ、「おすすめ10選」のような一覧を載せていません。理由は2つあります。

  • 正解が読み手の要件で変わるから。設備が30台の工場と、複数の建物を管理する会社とでは、必要な機能も払える手間もまったく違います。誰にとっても1位になる製品はありません。
  • 当社が製品の提供元だから。当社は「設備管理の匠WEB版」を提供する立場であり、他社製品を公平に評価できる立場にありません。評価の代わりに、評価に使える基準をお渡しします。

当社製品についても、後半で同じチェックリストに照らして、できることと有料プランでないとできないことをそのまま示します。合わないと判断する材料としても使ってください。

比較の前に決める3つのこと

製品の資料を集める前に、次の3つを紙に書き出してください。これが決まっていないと、機能の多い製品ほど良く見えてしまいます。

1. 何を管理したいか ── いま一番困っていることを1つ選ぶ

「修理の履歴が残っておらず、前回どう直したか分からない」「定期整備の期限を見落とす」「点検表が紙のまま貯まっている」「部品が必要なときに無い」。困りごとによって、重視すべき機能は変わります。全部を一度に解決しようとせず、最初に解決したい1つを決めてください。それがチェックリストの「必須」項目になります。

2. 誰が入力するか ── 人数と場所を決める

入力するのが設備担当者1人なのか、現場の作業者も入力するのか、事務所のパソコンからか、現場でタブレットからか。これで必要なログインID数と、現場入力への対応が必要かどうかが決まります。ID数は多くの製品で料金に直結するため、費用の比較にも欠かせない前提です。

3. 何台から始めるか ── 最初の範囲を決める

全設備を一度に載せる前提で選ぶと、移行の手間が大きく見えて導入そのものが止まります。「止まると困る」設備10台から20台で始め、回ることを確かめてから広げる前提にすると、製品に求める条件が現実的になります。仕組みを組み立てる順序は設備管理の始め方|ゼロから仕組みをつくる5つのステップを参照してください。

設備保全管理システムの機能チェックリスト

次の表は、候補の製品を同じ基準で比べるためのチェックリストです。使い方は3段階です。

  • 必要度を先に書く。各項目に「必須・希望・不要」を記入します。製品を見る前に書くのがコツです。
  • 候補ごとに評価する。資料と試用で確かめ、「2点: そのままできる」「1点: 工夫や追加費用があればできる」「0点: できない」で採点します。
  • 必須から見る。必須の項目に0点がある候補は、合計点が高くても外します。残った候補を、希望項目の合計点で比べます。
確認項目 確認すること 必要度 評価
基本の記録
設備台帳 自社の管理番号・設置場所・分類で登録し、探せるか。登録できる台数に上限があるか
修理・整備の履歴 記録が設備1台ごとに紐づき、その設備の過去の対応を時系列で見られるか
故障の記録 故障を修理・整備と分けて残し、設備別や種類別に数えられるか
計画と点検
保全計画 周期を登録すると予定が自動で作られるか。予定と実績が紐づき、未対応が一覧で見えるか
点検 点検項目と判定のしきい値を自社で設定できるか。測定値の推移を追えるか
現場での入力 タブレットやスマートフォンで現場から入力できるか。写真を残せるか
通知 予定日や未対応をメールなどで知らせる機能があるか。どのプランから使えるか
部品・分析・資料
部品在庫 交換部品の在庫数を保管場所ごとに持てるか。下限を下回ったときに気づけるか
集計・グラフ 設備別・期間別の件数や費用を、手作業の集計なしで見られるか
ファイルの添付 取扱説明書・図面・写真を設備や記録に添付できるか。容量の上限はどれだけか
使い続けるための条件
利用人数と権限 必要な人数分のログインIDを持てるか。人によって見せる範囲や操作を分けられるか
項目の調整 台帳の項目名を自社の呼び方に変えられるか。独自の項目を足せるか
データの出し入れ 手元のExcel台帳を取り込めるか。登録したデータをCSVなどで取り出せるか
サポート 電話・メールで質問できるか。初期設定やデータ作成を手伝ってもらえるか。それは料金に含まれるか
試用と契約条件 契約前に実際のデータで試せるか。契約の最低期間と、やめるときのデータの扱いはどうか

保全計画と点検を別の行にしているのは、この2つが別の仕組みだからです。保全計画は交換や整備といった作業を予定どおり実施する仕組み、点検は設備の状態を確認して記録する仕組みで、製品によって片方だけが充実していることがあります。自社に必要なのがどちらなのかを分けて確認してください。各機能が何をするものかはCMMSとはの記事の機能一覧にまとめています。

選定で失敗しやすい3つのパターン
  • 機能の数で選ぶ。使わない機能は入力欄と画面を増やすだけで、現場の入力を重くします。必須の項目が確実にできることのほうが重要です。
  • 決める人だけで選ぶ。毎日入力するのは現場の担当者です。試用の段階で実際に入力してもらわずに決めると、導入後に記録が続きません。
  • 月額だけで比べる。初期費用、人数による加算、オプション、移行と教育にかかる社内の手間まで並べないと、総額は比べられません。次の章で内訳を整理します。

費用の考え方 ── 金額より先に「内訳」をそろえる

保全管理システムの費用は、製品ごとに料金の立て方が違うため、月額の数字だけを並べても比較になりません。本記事では相場の金額は示しません。規模と構成で大きく変わり、根拠のある一律の数字を示せないためです。代わりに、見積もりを取るときにそろえるべき内訳を示します。

費用の項目 内容と確認のしかた
初期費用 契約時に一度だけかかる費用。環境の準備や初期設定が含まれるのか、別料金なのかを確認する
月額・年額の利用料 使い続ける間かかる費用。月払と年払で金額と契約の最低期間が変わることがある。1年使った場合の総額に直して比べる
ユーザー数による課金 1人ごとに料金が加算される方式と、プランごとに使える人数が決まっている方式がある。「誰が入力するか」で決めた人数で計算する
オプション・上位プラン 通知、ファイル添付、項目の追加、容量の増加など。チェックリストで必須にした項目が、基本の料金に入っているかを1つずつ確かめる
移行の手間 いまの台帳や履歴を移す作業。自分で登録するのか、支援を頼めるのか、頼む場合に費用がかかるのか。請求書には出ない社内の作業時間も費用として数える
教育の手間 入力する人全員が使えるようになるまでの時間。説明会や操作説明が料金に含まれるか。人が入れ替わるたびに発生する点も考える

見落とされやすいのは下の2行です。移行と教育は見積書に金額として出にくい一方、導入が止まる原因の多くはここにあります。最初の範囲を小さく決めておくと、この2つは大きく減らせます。

クラウド・オンプレミス・Excelの違い

製品を比べる前に、そもそもどの形で管理するかという選択があります。優劣ではなく、向き不向きの違いです。

クラウド型のシステム オンプレミス型のシステム Excel
しくみ 提供元のサーバにあるシステムを、ブラウザなどから使う 自社のサーバにシステムを入れて使う 表計算のファイルを自分で作って管理する
費用のかかり方 利用料を払い続ける形が中心 導入時の費用と、サーバの維持・更新の費用がかかる 追加の費用はほぼないが、作る手間と直す手間がかかる
保守の担い手 サーバの管理は提供元 自社(または委託先) ファイルを作った本人。異動すると直せる人がいなくなりやすい
複数人・現場での利用 ネットワークにつながれば場所を問わず使いやすい 社内ネットワークの設計しだい 同時に更新しにくく、最新版がどれか分からなくなりやすい
向いている場合 社内に専任のIT担当がいない。小さく始めたい 社外にデータを置けない決まりがある。サーバを管理できる体制がある 台数が少なく、担当者が1人で、月次の突き合わせを続けられる

Excelは選択肢から外すべきものではありません。台数が少なく、1人で管理し、予定と実績の突き合わせを続けられているなら、Excelのままで十分です。台帳・履歴・計画が別々のファイルに分かれてつながらなくなったとき、複数人で使う必要が出たときが、システムを検討する時期です。その際、クラウド型かオンプレミス型かは、まず自社の情報管理の決まり(社外のサーバにデータを置けるか)を確認すれば、多くの場合は自然に決まります。

無料トライアルを意味のある試用にする

候補が2つか3つに絞れたら、必ず実際に触って確かめます。ただし、ログインして画面を一通り眺めるだけでは何も分かりません。試用は次の形で行ってください。

  • 合格の条件を先に書く。チェックリストで必須にした項目を、試用で確かめる項目としてそのまま使います。条件を後から決めると、触った印象の良さで決めてしまいます。
  • サンプルではなく自社の設備を登録する。実際の設備を10台ほど、自社の管理番号と設置場所で登録します。自社の呼び方や分類が無理なく入るかは、実データでしか分かりません。
  • 1件の仕事を最初から最後まで通す。機能を1つずつ見るのではなく、下の表の流れを通しで行います。機能と機能のつながりに、製品の違いが最もよく表れます。
  • 現場の担当者に入力してもらう。説明なしでどこまで入力できたか、どこで手が止まったかを記録します。これが教育の手間の見積もりになります。
  • 質問を1回してみる。分からなかった点を実際に問い合わせ、返答の形と早さを確かめます。あわせて、試用の期間と、試用後に登録したデータがどうなるかも確認します。
試用で通す流れ 見るところ
1. 設備を登録する 最小限の項目だけで登録を終えられるか。あとから探しやすいか(項目の決め方は設備台帳の作り方を参照)
2. 故障と修理を1件記録する 記録が設備に紐づくか。その設備の履歴として後から見つけられるか(書き方はメンテナンス記録・故障履歴の書き方を参照)
3. 定期的な作業を1つ登録する 周期を入れると予定が作られるか。予定に実績を入れたとき、未対応の一覧から消えるか(保全計画の立て方を参照)
4. 点検を1回入力する(必要な場合) 自社の点検項目を設定できるか。現場の端末で入力しやすいか(設備点検表の作り方を参照)
5. 集計を見て、データを取り出す 入力した記録が集計やグラフに現れるか。一覧をファイルとして取り出せるか

なお、「無料」には期間限定のトライアルと、期間の制限なく使い続けられるフリープランなどの種類があり、確かめられる範囲が変わります。運用が続くかどうかまで見たい場合は、期間の制限がない形のほうが向いています。無料の種類ごとの違いと注意点は無料の設備管理システムでどこまでできるか|3つの「無料」の違いと確認すべきポイントで詳しく解説しています。

候補を1つに決めたあとの導入の進め方と、よくある失敗は、次の記事で解説しています。

同じチェックリストで見た「設備管理の匠WEB版」

当社の「設備管理の匠WEB版」を上のチェックリストに当てはめます。採点は読者の必要度しだいなので点数はつけず、事実だけを並べます。

確認項目 設備管理の匠WEB版の状況
基本の記録 機器台帳・メンテナンス台帳・故障台帳を、フリープランを含むすべてのプランで利用できる
保全計画 保全計画台帳に周期を登録すると予定が自動で作られ、カレンダーでも確認できる。予定と実績が紐づき、ダッシュボードに「保全計画未完」が表示される。登録できる台帳数はプランで異なる(下の表)
点検・現場での入力 点検台帳とタブレットアプリでの点検入力を、すべてのプランで利用できる。点検項目ごとに注意・警告の2段階で上限値・下限値を設定できる。点検アプリでの写真撮影は有料プランの機能
通知 メール送信機能は有料プランの機能。フリープランでは使えない
部品在庫・集計 部品消耗品台帳(保管場所別の在庫数と下限値を持てる)と、統計・グラフ機能を、すべてのプランで利用できる。ダッシュボードには「修理未完」も表示される
ファイルの添付 関連ファイル登録は有料プランの機能。フリープランではサンプルとして5ファイル(1ファイル10MBまで)に限られる
項目の調整 項目名の変更はベーシックプラン以上、台帳への項目追加はスタンダードプラン以上。フリープランではどちらもできない
データの出し入れ 台帳の一覧をCSVで出力する機能がある。手元のExcel一覧からデータを作成する支援は、フリープランでは受けられず、ベーシックプランでは有料対応、スタンダードプラン以上で対応
サポート 電話・メールでのサポートは有料プラン。フリープランの問い合わせは、原則としてFAQへの掲載など公開の形で対応する。リモートでの説明は、有料プランで対応、フリープランでは有料対応
試用と契約条件 フリープランは初期費用0円・利用料0円で、契約の最低期間がない。ただし入力が3ヶ月以上ない場合はサーバ利用を中止することがある。有料プランの最低期間は月払で3ヶ月、年払で1年間

費用の内訳は次のとおりです。料金はユーザー1人ごとの加算ではなく、プランごとにログインできるID数が決まっている形です。金額は税込で、かっこ内が税抜です。

フリー ベーシック スタンダード マックス
初期費用 0円 31,900円(29,000円) 31,900円(29,000円) 99,000円(90,000円)
月額(月払) 0円 10,890円(9,900円) 21,780円(19,800円) 月払の設定なし
年額(年払) 0円 108,900円(99,000円) 217,800円(198,000円) 382,800円(348,000円)
ログイン可能ID数 1 5 10 無制限(サーバの性能による限界あり)
データ容量 2GB 50GB 100GB 200GBから
保全計画台帳 100台帳まで 1000台帳まで 2000台帳まで 無制限(サーバの性能による限界あり)

複数の拠点を分けて管理する「拠点の追加」と独自ドメインでの利用は、マックスプランのみの対応です。また、チェックリストのうちユーザーごとの権限の分け方、Excelやほかのシステムからのデータ取り込み、自社サーバへの導入の可否は、本記事では確認できた事実として書ける情報がないため記載していません。これらが必須の場合は、検討の際にお問い合わせで確認してください。

台帳・履歴・保全計画・点検・部品在庫・集計という日々の基本操作はフリープランの範囲にあり、複数人での利用、通知、ファイルや写真の蓄積、項目の調整、個別のサポートが有料プランの範囲です。担当者1人で重要な設備から始める場合はフリープランで試用の流れを最後まで通せますし、最初から複数人で入力したい場合や通知が必須の場合は、有料プランの費用を上の表で他の候補と並べてください。フリープランはこちらのページから登録できます。

よくある質問

Q. 中小企業におすすめの設備保全管理システムはどれですか?

A. 特定の製品を挙げることはできません。合う製品は、解決したい困りごと・入力する人数・始める台数で変わるためです。中小規模の組織で共通して重視したいのは、小さく始められること、現場の担当者が説明なしで入力できること、契約前に自社のデータで試せることの3つです。専任のIT担当がいない場合は、サーバの管理が要らない形であることも条件に加えてください。そのうえで本記事のチェックリストに必要度を書き込み、候補を2つか3つに絞って試用するのが確実です。

Q. 保全管理システムの費用はどれくらいかかりますか?

A. 製品・人数・構成で大きく変わるため、一律の相場はお示しできません。比べるときは、初期費用、月額または年額の利用料、ユーザー数による加算、オプション、移行と教育の手間という内訳をそろえ、自社の人数で1年使った場合の総額に直してください。料金を公開していない製品は、同じ前提(人数・台数・必須機能)を伝えて見積もりを取ると比較できます。当社製品の料金は本記事の表のとおりで、無料のフリープランもあります。

Q. 比較サイトやランキング記事は参考にしてよいですか?

A. 候補を知るための一覧としては役に立ちます。ただし、順位や点数は書き手の基準によるもので、自社の必要度は反映されていません。一覧から候補を拾い、本記事のチェックリストで自社の基準に置き直して比べる、という使い分けをおすすめします。機能の有無は記事の公開後に変わることもあるため、最後は必ず提供元の資料と試用で確かめてください。

Q. 試用の結果、どの候補も決め手に欠ける場合はどうすればよいですか?

A. 必須の項目が多すぎるか、最初の範囲が広すぎることがほとんどです。「いま一番困っていること」をもう一度1つに絞り、その1つを最も少ない手間で解決できる候補を選んでください。全機能を使いこなす前提で選ぶ必要はありません。記録が貯まりはじめれば、次に必要な機能は自然に見えてきます。

設備保全の用語や保全方式の正確な定義は、当社が運営に関わる中立メディア「設備メンテナンスNews」の用語集で、官公庁の一次資料にもとづき解説しています。あわせてご覧ください。

本記事は設備保全管理システムの選び方の一般的な考え方を解説したもので、特定の他社製品を評価するものではありません。「設備管理の匠WEB版」の料金・機能に関する記述は2026年10月時点の内容です。プランの内容は変更される場合があるため、最新の情報は当サイトの料金プランの表でご確認ください。

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